MGB mk.1とRBモデル改(コンバージョンモデル)、このところMGB全体の中古市場相場が下がっていて、それほど差が無く選べるようになっている。RBはダメと言う人もいるが(W)あれはあれで悪くない。当時としてはベターな回答であった。

 MGBを買う上で、意匠性はMk.1やMk.2が優れているところが多いのを認めた上で、走ることを目的としてあえてRBモデル(改)やMk.3を買ってはどうか、という提案である。


 デザインを必要とする工業製品は、概ねコンセプトや試作モデルが一番デザイン性に優れるのは当たり前のこと。 ただし、自動車の場合はデザイン(というよりスタイリング)だけが重要ではなく、メカニズムの信頼性や性能というのも重要なファクターであり、後期ほど向上することが殆どである。

 意匠面ではmk.1。走行性や信頼性ならMk.3かRB改。両者のバランスで言うとMk.2前期をお勧めしたいと思うが、以外とMk.2前期は中古市場に出てこないし、(Mk.2後期北米モデルはインテリアがMk.3と同じなので意味が無い)Mk.3はきちんと整備されたクルマが意外と少ないようだ。(Mk.1でもコストを掛けて作り替えれば、RBと同等の信頼性と走行性能を獲得できるし、RBもインテリアを含め、ほぼMK.1仕様にすることも可能。どちらも結構な金額になる)

 RBモデルの北米・日本向けは電子点火系を採用しており、発売当時は信頼性が低かったが、もはやそれらの部品はリプレイスされているはずなので信頼性に関しては問題ないだろう。

 RBモデルの最大の問題は、重量と日本・北米モデルのエンジンスペックである。最高速度は140km/h程度。この衝撃吸収バンパーはおよそ60kg程(RB初期は80kgらしい)の重量増加を招いており(一部の構造体は簡単には除去できない)、決して楽な作業ではない。しかし日本においては殆どのRBモデルがラバーバンパーを外しているので、市場在庫数はかなり多い。
 エンジンは日本・北米向けは圧縮比が落とされ65Hpほどで、英国向け95Hpに比べ大幅なパワー低下であるが、OH時に圧縮比を戻し、現代の触媒やデバイスを使用すれば90Hp程度を発揮可能である。
 一方、RB(Mk.3後期〜)のメリットとしてはブレーキサーボの装備が上げられる。特にRBは最初から装備されており構造上ダイレクト感が高い。
 RBモデルではステアリングラック廻りが変更され、扁平率70タイヤや、場合によっては65タイヤも十分実用出来る。その場合も操舵力は問題ないし、直進安定性にもほぼ影響は出ない。
Mk.2以降に装備されたフルシンクロミッションはMGCと共通であり、耐久性が向上したうえに、ローのシンクロは弱いとは言え重宝する。もちろんデフも耐久性が向上している。
 ミッション、デフなどの駆動系の部品も、Mk.2以降のタイプは潤沢なので、安心して日々走らせることが出来る。
 RBやMk.3後期のアドバンテージには安全性がある。現代のクルマと比べてしまえば何も対策が無いに等しいが、一応ながらクラッシュテストを行って設計変更を行っており、ステアリングコラムが衝撃吸収構造になっているなど生存性はMk.1より結構高い。シートベルトも2点やスタティック式3点は標準(RBは慣性リール式)で装備されているし、シートも耐衝撃設計である。
 ヘッドレストとシートベルトが無いことがカッコイイと考える人もいるが、一般公道で自動車を運転し、同乗させるのであれば最低限の安全装備は使用するべきだ。
 次に、耐候性。Mk.1の幌はフォールディング(折畳式)もパックアウェイ(脱着式)も、いまいひとつであるが、MGB後期型の固定フォールディング式(Black Folding)は。シール材さえメンテナンスしていれば、多少の暴風雨でも雨漏りしない。
 ということで、実際にクルマは走ってナンボ、走らせるのが楽しいと考えるのであれば、RBモデルを積極的に選んでも良いと思う。Mk.1より遙かに安いコストで維持可能だし、パーツを探す手間はほぼ不要。浮いたコストで快適なホテルや美味いランチを目指して走りに行けば良い。

 Mk.1は年式制限のあるヒストリックイベントに出たくなったら、そのときに考える(W) ただ、そういったイベントで戦闘力を持つくらいのMGBのコストなら、もう少し費用を掛けてMGAやTシリーズを購入した方がたぶんコストパフォーマンス的に・・・(w) 


 左のサンプルは、RB1980年 日本モデル で外観は「ほぼ」73年式(インテリアを除く)。右のサンプルは1964年(販売は65年)の日本向け。ほぼオリジナルである。
Mk.3(LHDモデル)とMk.1の比較と考えてもよい。
  • RB1980
    Mk.1 1964
    • 勿論グリルは非純正(W)
      あえてMk.3後期用の”ブラックメッシュ”を設置。値段はMk.1用と同一。不人気な69-72のリセスドグリルが一番高価
      Mk.3グリルなので、角形テールと併せて、オーバーライダーはゴムTIP付きを選択。
      LHDモデルはマーカーはアンバー一色のタイプにすべきだが、RHDモデル用の2色(ポジションランプ付き)となっているのは部品の発注ミスのため(W)。
      TEX製のドアミラーは実用的で、フードアップ時にもある程度の安全性を担保する。
    • MGと言えば縦格子グリル。
      フェンダーミラーはオプションで、日本では概ねこのタイプ(Lucas型)か砲弾型(ReidyotやWalpres)が装備されているが、英国では装備しなかったり、ドアミラーを装備しているクルマも多い。
      このタイプのフェンダーミラーは、雰囲気は良い物の、後写鏡としてはほぼ使い物にはならない。心眼で見る必要がある(W) 

      なお、Mk.1ではオーバーライダーもオプションであり、装備されていないことも多い@英国
    • 後期の角形テールランプ。モデルチェンジ当時としてのデザイン性と、側方投影面積の増加、リフレクターの面積増加が意図されている。
    • 丸形(初期型)のテールランプ。意匠性としては非常に優れる。汎用のルーカス製品ではあるがMGB以外では採用が無いはず。後期型とは台座ごとASSY交換すれば互換性がある。
    左 Mk.1 1964 / 右 RB1980
    RBは最低地上高がおよそ1インチ上げられているため、フロントコイル、リアリーフのスプリングを交換して地上高を1インチ下げる。これをしないと腰高感が格好悪い。
    歴代モデルで最大効果のアンチロールバーも標準で装備されており、走行性能としては高性能@MGB比
    ※ボルトオンホイール用と、ワイヤーホイール用ではリアのドライブシャフトの長さが違い、
    オフセットも違うので、ワイヤーホイールの方が若干内側に入っているのが判る。
    RB 1980
    Mk.1 1964
    • 1967年よりバックアップランプ標準装備。RBモデルは、コストダウンの為パネル接合部の半田埋めが省略されているのがわかる。1974以前は半田で処理されている。(Mk.3まで)
      (この部分をパテで埋めているRBも結構ある)
    • オーバーライダーに装備されているライセンスランプは横長プレートには良いが、北米や日本のライセンスプレートには少々向かない。オーバーライダーを装備しない場合や、小型プレートの場合はバンパーに穴を開け、小型のライセンスランプを装備するか、ナンバーのバッキングプレートにルーカスのランプを取り付けることもある。
    RB 1980
    Mk.1 1964
    • ステアリングホイールは非純正のモトリタ。ホーンモティーフはダミーでMk.1用のリプロ品(クラッシュ時の安全性とはトレードオフ)。ホーンは欧州車式にインジケーターレバーの先端である。
      ダッシュパネル全体が安全対策のためフルトリムで、クラッシュパッドで覆われている。
      RBモデルはラック&ピニオンの減速比が高められ半回転近く余分に回さないといけないが、それでも十分クイックである。70タイヤ装備時でも十分軽い。長距離走行時はかなり楽である
    • 樹脂+スプリングスチールの純正ホイール。インパネはスチールに高温乾燥による塗装。トリムは上部の一部のみ。
      各計器を含めて、意匠性ではMk.1圧勝・・・
      RBに比べクイックなハンドリングとされるが、オリジナルは大径であり、スプリングスチールにより体感としてはダルな感じ。小径に交換すると70タイヤでは重く、直進安定性が犠牲になる。
    RB 1980
    Mk.1 1964
    74年後期型よりフルトリム&クラッシュパッド付 スチールパネル表し
    • プッシュ・ドアハンドル。事故の際にも簡単な工具で引っ張ってドアを開けることが可能である。もっとも横転すればあまり意味が無いが・・・
    • プル・ドアハンドル Apr.1965まで。折れることもあるので扱いに注意。これを貴重と考える人もいるが、正直近づかないと識別できない(W)
    • 同ロック機構。事故発生時に勝手に開かないように意図された。RB後期は写真よりさらに下に部品が追加されている。
    • シンプルなロック機構であり、心許ないが、意匠性には優れる。内部機構は部品として欠品が多く要注意。



    以下 Mk.1のインテリア詳細

    インテリアの意匠性は、さすがにMk.1からMk.2前期までが優れている。

    • 60年代らしくトグルスイッチを採用。
    • MGB mk.1 インテリア。左のドアリリースレバーはオリジナルMINI用で代用。(折れたとのこと・・)
    • キャスト製にクロームメッキのオープナー・ノブ。後にステンレスプレート折り曲げとなる。こういったところも初期はコストをかけていた。
    • フードはリアのブートリッドに格納されている為、すっきりしている。カーペットの下にはバッテリーボックスがあり、本来6V用が二つ入るが、12Vの小型を並列接続で使用。
    • アクセルペダルは非純正。オリジナルは小さく、ヒール&トゥをやりずらい。左側はヘッドライトのディマー(減光)スイッチ。
    • "packaway"用フードフレームのソケット。RBモデルまで残されている。ハードトップの取り付けにも使用する。
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