岩ぞう」シリーズ オーバードライブを解剖する!
レイコック・ド・ノーマンビル謹製
オーバードライブユニットの修理と考察


 人のODは、4速で走行中にスイッチ(SW)をONにしたとき、ODに入るとき と、入らないときが、しばらく続きました。同様にODから4速に戻らないとき も見られたそうです。たずねたところ、比較的、温度の低いとき、つまり走り始 めなどのギアオイルが固いときに症状が出る、と。もちろん電気のチェックは試 みて、異常無し。
こで、OD機構の作動原理を考えてみました。ODは、師匠の解説にも記述が あったと思います通り「油圧ソレノイドSW」で作動しています。これは、シフ トノブ上のSWで、ODユニット内の「オイル孔バルブ」の穴を電力で閉じて、 そこに発生した油圧の力を利用し、ODのコーンクラッチを動かしている仕組み です。
 SWをオフにすると、コーンクラッチがバネの反発力で元の位置に戻り、通 常の4速に戻るワケですね。

イメージ写真 Coming soon

80年usモデル(UB後期)

 て、ではこのバルブのオイル孔、すなわち穴が詰まったらどうなるか。答え; 勝手にODが作動します。もしくは、電力で閉じようとしたバルブが固着して、 閉じられません。油圧は発生せず、つまりODは作動しません。
 トラブルシューティングのとき、この後者の状態を想定しました。例のフタ (部品名はオイルサンプ)を外してみると、果たして磁石には鉄粉がビッシリ! 。Eng.オイルと違って、ギアオイルは、そう頻繁に交換しませんから、そりゃも うヘドロのよう・・・。
番から10番の軟らかいオイルを入れ、洗浄のために走行。ガレージに帰って 指定のオイルを満たすと、症状は消えていました。MGBのODは、ハウジング (ODケース)がギアボックスと貫通していますから、すなわちODとギアボッ クスは一緒に潤滑されています。一般的にギアオイルというと80番から90番 の極めて固い粘度のオイルを使いますけれど、MGBの場合はエンジンオイルと 同等の軟らかいオイルを指定しています。なぜなら、上記の理由。粘度の高い、 固いオイルでは、バルブが詰まった状態と同じことが起きるからなのでしょう。 指定オイルは10番から15番、銘柄は何でもいいようです(Eng.オイルと同銘 柄が手間無くよろしいようで)。

  • 注:後期型(UBモデル)は、夏20w-50冬10w-40のマルチグレードオイルでよい


実際の作業の留意点。

  • サンプを固定しているボルトは割と小さいモノ(3/8"?)なので、締めすぎる と あっけなくねじ切れます。(友人は1本破損!)
  • フタを外す前に、そばのドレーンからオイルを抜き去っておかなければ、まと もに顔面にオイルを浴びてしまいます。オイルは銘柄にもよるのでしょう が、 意外と甘辛いです。でも決して美味じゃありません(経験談)(*_*)"
  • フタを外すと同時に、スプリングに押された「ポンプ・プランジャ・Assy」  が飛び出してきます。組付けの際、Assyの順序を間違えないようにせねばなりま せん。ゆっくり外してAssyのまま抜き出すのがベスト。 (ヘインズ・マニュア ル:P132,部番13,14,15) 
  • 組付けの際、ガスケットは再使用できません。新たなガスケットと、液状パッ キン(シリコン・シール)があれば、完全にオイル漏れを避けられます。


 上のオペにかかった費用は、エンジンオイルが洗浄用とホンチャン潤滑用で4 L缶X2=5000円程度。 (指定オイル量は、G/B=3L、OD=0.5L、合計 3,5L)
  スケットは英MOSSから個人輸入で、確か数百円。その他、磁石などの洗浄用に ホワイトガソリンがあると便利。これは手持ちを消費してタダ。
 残るは、勇気と労力。なにしろ真冬のオペだったので、手はかじかむ足は凍 てつくで、二人ともハイになってました。



ついでにODとデストリビューターの関係について

ODイメージ Coming soon

  E gn.ルームには、点火の配電やタイミングを制御する「ディストリビュータ」 があります。本来「デスビ」の点火時期を早める進角機構「バキューム・アドバ ンサ」には、キャブの直後の負圧(真空度)をバキュームホースで吸い込むのモ ノですつまりアクセルの開度に見合わせて、作動します。

 ころが、OD付きのMGBを見ると、キャブの直後の負圧でなく、インマニの 負圧を利用。アクセルを急に閉じたとき進角される仕掛け。しかもODがオンの とき「デスビ」に負圧がかからないうに配線配管されています。 Egn.ルームの 進行方向「左側」の、座席との隔壁に設置されている、電線とゴムホースが差し 込んである小さな箱がそれです(サイコロ・キャラメルくらい)。

 れは、何を意味するか。「デスビ」の進角機構は、パワーとドライバビリティ の向上を狙って考案されたモノです。が、このMGBの取り回しでは、アクセル の開度や負圧は無視して、むしろ逆の効果が現れます。
 Dに入った直後、エンジン回転は400rpm前後下がります。このとき排気ガスは 急に汚く(炭化水素など)なるわけで、すなわち・・・どうやら、この不可解な シロモノは、排ガス対策のために生まれた、走るMGBには無用の産物のようで す。

 もこれまで、いろいろなMGBの本や資料を読んで、改良、改造のノウハウを 調べてきたのですが、洋書も含めてコレに言及したモノはありませんでした。友 人のOD修理をしていて解明したものです。やってみなくちゃ分かんな いこと って、あるもんですね(^o^"// で、どうしたか。本来の目的に沿って進角が作動 するよう、容赦なく線と管をぶった切りました。いえ、そんな乱暴なことはしな くて、ちゃんと処置しました。
 意点は、電線をショートさせないよう処置すること。それからホース。インマ ニのホース取り付け口を、完全に密閉しておかなければ、混合気に空気が漏れ込 み、薄くなります。アイドリングが不安定になって、パワーもでません。「デス ビ」側の口は、放っておいてもかまいません。進角しないだけです。「デスビ」 は良くできていて、もう一つ別の進角機構をそなえています。遠心進角がそれで 、エンジン回転だけを頼りに作動する仕組み。実際のパワーや運転感覚はこちら が司っていますから、このバキューム進角は殺しても、ほとんど影響はないよう です。 じゃ、メリットはというと・・・。僕は彼のMGBの元々の乗り味を知 りませんから、あくまで当人の弁(弁当じゃありません(^o;"")

 イドル回転がやや高まって安定した。低回転から中速域のレブがスムーズにな った。全体に身軽で速くなった気がする。などでした。トップエンドの力とはあ んまり関係のない領域の話しですが・・・。


著作権は「岩ぞう」氏に、HTMLに関してはMGB on the WEBにあります。