「有鉛・無鉛MGB?」

 いクルマのエンジンにに肝要なのは、オイルよりもむしろ燃料と言えるかも知れませんね。・・・そうです有鉛ガソリン。
1.鉛とオクタン価  無鉛対策が施されていないエンジンに無鉛ガソリンを与えると、バルブシ−トの損傷を招き、圧縮漏れを起こす可能性が生まれます。
 ガソリンのアンチ・ノック性能を示すオクタン価は、四エチル鉛を添加することによって80〜100オクタンに上げることができるワケで、精製技術な低かった頃のかつての燃料は、そうしてハイ・オクタン価を維持していました。順を追ってお話しますね。
 そもそもエンジンのノッキングとは、異常燃焼を指していいます。たとえば低速でアクセルを踏み込んだときに「キンキンキン・・・」とか「カリカリカリ・・・」という感じの金属的な打音がするアレです。
 圧縮された混合気が点火プラグで着火され爆発するのが正常な燃焼なんですが、オクタン価が低かったり、圧縮が高すぎたり、点火時期が早すぎたり、また燃焼室形状が悪かったりすると、着火による爆発以外の暴発燃焼=「デトネーション」が起き、圧力の急上昇によって燃焼室内に圧力振動が発生します。
 これが先の打音の音源で、最悪のときにはピストン・ヘッドに穴があいたりもして、エンジンにとっては致命傷というべき事態。併せて排気ガスも不完全燃焼によって一酸化炭素や炭化水素などの有害成分が多くなり、まったく目が痛くなります。
 この「デトネーション」を避けるためには、圧縮比を低くするか、点火時期を遅くするかなど、エンジン・パワーにとってはネガティブな対策を選択せねばならず、必然的にパワー・ダウンを余儀なくされるんですね。MGBの北米仕様などがロー・コンプレッションになっているの理由には、こんな事情もあったのかも知れません。
 こうした弊害の対策の一つが、四エチル鉛を添加してオクタン価を上げた有鉛ガソリンなんです。ところが排気公害が苦慮される時代になると、燃え残ってしまう有毒な鉛は使えなくなり、一方で製油技術が進んで、画期的な無鉛ハイオク燃料が誕生しました。こうして排気公害の少ないエンジンが生きる道を見つけたワケです。

2.過酷な条件

 さて、問題の有鉛ガソリンとバルブ・シート。
 バルブ・シートは、バルブの座金とも言える部位の環状部品で、燃焼室の気密を保つための重要なモノです。吸気・排気ともにバルブは開閉するのですが、4気筒8バルブのエンジンが1000rpmで回っている場合で1秒間に約8回も開閉し、さらに排気バルブは摂氏2000度もの高温にさらされているワケなんです。
 そんな過酷な状況でバルブとシートは、スプリングの強い力によって「火あぶりの刑+百タタキの刑」にせしめられているので、傷になったり変形しないような強度が要求されます。

 最近のエンジンではアルミ合金のヘッドを用いていますから、バルブ・シートは耐久性を持った素材(焼結合金など)が打ち込まれています。しかし旧式のエンジンの大半は鋳鉄ヘッドであり、場合によってはシート状に加工(カット)しただけのモノもありました。
 添加剤である「四エチル鉛」は、燃焼のときに燃え残って排気バルブから排出され、同時にバルブ・シート部に付着します。その「燃えカス」がうまい按配に緩衝剤となって、結果的にシートの損傷を防いでいたという経緯なんですね。
 だから、もし無鉛未対策のヘッド(シート)に鉛成分の含まれていないガソリンを使用すると、たちまちシート損傷の恐れ=たとえば当たり面の段付きや、バルブ・フェイスの破損などを招く、という懸念が生まれます。が、それでも走れなくなるほどの圧縮漏れに至るまでには長い時間がかかりますから、即刻なんとかしなくては抜き差しならない、という緊急事態ではありませんけれど・・・。


3.無鉛対策

 そこで、古いクルマに乗る人のあいだで持てはやされたのが「バルボーグ」という商品名のガソリン添加剤。40〜50リットルの無鉛ガソリンに1本(\900)の割合で混入するこの薬品は、おそらくバルブ・シートを保護する目的で、鉛の代用として考案されたモノではないでしょうか。
 よく「古いエンジンにはハイオクを入れよ」と言われますが、無鉛ハイオクを入れたのでは、ノッキングを抑えることができても、少なくともバルブ・シート保護の役目は期待できません。
 さらに加えるなら、当時の有鉛ハイオクと現在のレギュラーのオクタン価は90対 85程度の差ですから、レギュラーでも何ら遜色は無いとも考えられます。不純物の極めて少ない100オクタンのガソリンなんて、当時の精製技術では成し得なかったのでしょうね、きっと。

 かかる事由から、MGBの燃料物質による圧縮漏れは、バルブ・シートを耐久性のあるそれに交換するしか防止策はないようですね。でも、それだけでヘッドを降ろすのはあんまりなんで、エンジンをオーバー・ホールするときに一緒にやってしまうのが得策でしょうねぇ・・・。
 参考までに、英MGOCスペアーズで販売(アウトライト・セール)している標準スペックの無鉛対策ヘッドは、バルブ組み付きのアッセンブリーで、なんと約\50,000。治すが安いか、買うがお得か、さて。


蛇足

 以前、#7会議室で話題に上った「レギュラー仕様のエンジンにハイオクを入れたら・・・?」に対する回答です(レス違いどころか会議室違いも甚だしいのですが、アッチはどうも照れくさいので・・・ROMされてた方もいらっしゃるでしょうし・・・燃料ネタというこどで・・・(^^;;スンマセン)。

 任意の点火時期調整が一概にできない昨今のエンジンでは、そうしてみても大した効果は期待できないと言えます。
 アンチ・ノック・センサーを備えたエンジンなら、点火時期を勝手に考えてコントロールしそうなんで、やや効果が見られるかも知れません。が、それとて、どだい圧縮比を高くできる仕掛けではないので、いきなり爆発的な加速ができるなんてことはあり得ないでしょうね。
 尤も、圧縮比を高くしない代わりに過給器などの過給圧を増加させるか、またはMGFの「VVC」やホンダの「Vテック」のようにバルブ・オーバーラップを変化させ、混合気の量を増加させれば同じ結果ですが、果たしてノック・センサーがそこまでのコントロールを司っているのか否か・・・。

 結論は、せいぜい燃費向上がみられる程度には期待できますが、気温や乗り方、距離などが一定していない自家用車のレベルでは、(日本の製油水準をもってすれば殊更に)レギュラー仕様にはレギュラーを入れておいた方が、出来上がり安価な燃料費で済むと言えそうです。
 強いて述べれば、ハイオクとの差額でエア・フィルターやオイル・エレメントを交換した方が、クルマはずっと健康に保つことができるでしょうね(^^)。

長文お付き合いのほど、ありがとうございましたm(_ _)m


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