いわぞうシリーズ

MGBのサスペンション廻り考察

 

 MGBのフロントサスペンションに、ピローボールを用いたコンバージョンキットが無いだろうか、とご質問をいただき、いろいろ調べてみました。
 しかし残念ながら...もしかしたら有るかも知れないのですが、手元の資料から見付けることができませんでした。BMCワークスも、当時は強化ブッシュで対処していたようです。また、近年の競技用MGBの完全なピロ足は、各チューナーがワンオフで制作したものと思います。
 Conv.KIT製品としてあるのは、アンチロールバーのドロップリンクがピロになっている物です(後述)。
 その他にコイルオーバーサスのConv.KITがありますが、これもピロではないようですね。


 それではMGBの足周りをガッチリさせる仕掛を考えてみましょう。

 まずピボットのジョイントを、ピロに次ぐ強度を持つ「ナイラトロンブッシュ」に交換します。
 「ナイラトロン」はナイロンとモリブデンを主成分にするアクリルのように堅いブッシュで、ピロボールと同じくらいの切れ味が期待できます。しかしピロほどの切れではありません----この領域ではシャシー剛性にも問題は及ぶと思われます。


 次にコイルバネのレートアップと、ダンピングの調節。ブッシュだけが堅くて足がグニャグニャではクルマが飛び跳ねてしまいますよね。(笑)
 バネレートの高いコイルは長さも短い物が多いようなので、同時に、バンプストップ----サスが伸びきったときに衝撃を緩和するゴム台----もショートコイル用に交換する必要があります。
 ショックアブソーバーは、フルードの番手を上げるか、もしくは減衰調節のできるモノに交換します。


 そしてアンチロールバー(ARB)。競技用に用意されるのは 3/4"〜1"、それにタンデムバーと呼ばれる複数のARBを組み合わせたモノです。一般的に 3/4"〜7/8"でレートが170〜295Lbs/inが使い易いようですよ。
 このARBとロアウイッュボーンアームを繋ぐドロップリンクが、先述のローズジョイント式のそれです。リンクの長さは調節できますから、おおよそどんなコイルバネを使っても装着可能。
 さらに、ARBのセンターマウント(シャシーのラダー構造部へ固定する2箇所のマウント)の種類です。通常はブラケットとゴムブッシュがセットになっています。
 これに「ネオプレーン・ブッシュ」を用いるとかなりの強度が実現できます。「ネオプレーン」はウレタンに似た素材で非常に堅いゴム。これの柔らかいものがウェットスーツなどに用いられていますよね。
 ARBが 7/8"以上なら、アルミニウム製ダイキャストのマウントもあります。もはやブッシュとしての役目はなく、ただラダー部へ固定しているだけの強靱なマウントです。(笑)

 以上がポイントですが、このセッティングで実際に走ると、それはもう物凄い騒音と振動が起きます。
 音は我慢すれば済むのですが、問題は、各部のネジが緩んでしまうことです。それにシャシーがついてゆけるか否か...。参考までにアッシの現状の足周りを見てみましょう。


    岩ぞうMGB オリジナルMGB
コイルバネ 550Lbp/in 348Lbp/in
ピボットブッシュ ナイラトロン ラバーゴム
ショックアブソーバー SPAX 15段最強度 レバーアーム
バンプストッパー ショート ロング
ARB 3/4"comp.170550Lbp/in 9/16"comp.170550Lbp/in
ARBリンクブッシュ 純正 純正
ARBセンターマウント ネオプレーン ラバーゴム
キャンバー角 ネガティブ ポジティブ
ホイール/タイア 6J/175 4.5J/155

かつてサーキットを走っていた頃には、これに加えて以下のスペックでした。
ARB 7/8"comp.295Lbp/in
ARBセンターマウント キャストアルミ
 

 しかし余りにもガチガチで、街乗りには(阿呆なアッシでも)不向きと判断しました。
しかもシャシーのあちらこちらにクラックが現れ、明らかにシャシーへの負担増大が見られたので、あっさり諦めました。酷かったのは、アルミの ARBマウントが堅すぎて、ラダーのネジ穴部分が溶接ナットごと引きちぎられたことでした。
いまは、さる優秀な鉄工所で作ったワンオフの4mm鉄板ギプスで養生しています。(笑)


 もう一つ、アッシが実際に走ってみて感じたことはリアサスとのバランスでした。 ご想像の通りですが、前足だけをガチガチにしたらコーナーでクルマは腰砕けになり、ものすごく怖い挙動を示します。舵角を与えたときには切れがあるのですけれど、頭が向きを変えた直後にリアが吹っ飛んで行く状態ですね。
 これをクリアするためには、1.リアのロールセンターを下げ、2.バネ/ダンパー共にレートを高くし、3.さらに慣性によってアクスルが振られることを阻止する必要があるみたいです。
 また板バネの作用で後輪がキャストすることもスピンの一因で、4.リアの ARBも本当は必要なのかも知れません。

 上記の内、1.2.はコンバージョンKITで可能。
3.は悩んだ挙げ句に「パナード・ロッド」の追加を思いついたのですが、アクスルケースの固定位置に迷っている間にサーキットを止めてしまいました。すると最近になって英国MGOCからKITが発売されています。やはり考えることは同じなのですね。 「パナード・ロッド」とは...シャシーの一部とリアアクスルを斜め方向のリンク棒で繋ぎ止め、アクスルの上下浮動は自由に、しかし左右浮動を抑制する仕掛。軽自動車のリジットアクスルに用いられていますよね。
 その他にも、アクスルケースと板バネを斜めに(筋交い状に)固定し、アクスルの左右浮動を抑制することも考えました。これも後にMGOCから発売されたのですが、アッシのソールズベリーアクスル(バンジョーアクスル)の形状では仕様不可...後年のチューブアクスルのみ対応でした。


 4.は、これも先述の工場で作ってもらったワンオフ部品...板バネの動きを抑制する必殺のバイス型ブラケットで対処しました。板バネの中間をサンドイッチ状に固定し、板バネの全長が変わらないように締め上げる乱暴な部品です。板バネの前後端にかかるストレスはいかばかりやら...(笑)
ARBは、目下、とあるスタビメイカーが開発中と聞いています。が、しかし未だ発売の噂を聞きませんねぇ。


アッシの知っているのはこんなところなのですが、参考になれば幸いです。

以上です。では、またね。


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