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ゼニスの弱点 −修理上の注意点

ゼニスストロンバーグはタコか2?


ゼニス修理上の注意点

 の経験でのゼニス・ストロンバーグ・キャブレター(以下「ゼニス」と略)修 理上の注意事項を一つ・・・

 ニスのサクション・ピストンにはフランジ部分から周囲に円形に拡がり、キャ ブ本体とキャブ頂部(サクション・チャンバー頂部)との間で挟まれるようにな っているラバー・スカートが付いています。
 れはSUには見られない構造で、負圧になるサクション・チャンバーとベンチ ュリー部の間の気密を保ち、ベンチュリー可変機構の働きを高めるためのもので す。

 みにSUではサクション・ピストンのフランジとサクション・チャンバー内壁 との間はサクション・ピストンが上下に動くためのクリアランスが設けられてお り、厳密に言えばそこからチャンバー内部の負圧が漏れていることになります。 これは可変ベンチュリー・キャブレターの作動原理に係わることなのですがサク ション・ピストンの装着には向きが定められています。

 ストンの底部(ニードルが付けられ、キャブレター本体内部のジェットの付い たブリッジ部との間で、ベンチュリー部を構成する部分)には、ニードルを挟ん だ片側にピストンを上下に貫く穴が開けられています。
 キャブレター装着状態において、この穴はエンジン側に(エアクリーナー側 の反対、という意味でもあります)来なければなりません。

 故かと言うと、エアクリーナーを経てキャブレター内部に入ってきたフレッシ ュ・エアはキャブレターのブリッジ部とピストン底部との間で絞られたベンチュ リー部で加速され、そのために密度が下がります。
 このためこの部分が負圧となり、サクション・ピストンには下げる方向に力 がかかり、同時にニードルとジェットの間からガソリンが吸い出されてすぐさま 霧状に散らされてフレッシュ・エアと混じり合って混合気を作り出します。

 て問題はサクション・ピストンにかかる下向きの力。エンジンの負荷が増すほ ど混合気は必要であり、そのためにはエンジン負荷に合わせてベンチュリー部の 体積を拡大する必要があります。と言うことはベンチュリー部での下向きの力に 抗して本来ピストンは上昇する必要があるという事です。
 こで効果を発揮するのがピストン底部の後ろ側に開いている穴とサクション・ チャンバーです。ベンチュリー部で発生した負圧は、ジェットからのガソリンと 一緒にピストン底部に開いた穴からサクション・チャンバー内の空気をも吸い出 します。これによってサクション・チャンバー内も負圧になってサクション・ピ ストンを持ち上げる力となって働きますが、その力はサクション・チャンバーの 効果でベンチュリー部よりも大きなものとなります。つまりピストンは持ち上が る訳です。
 の構造の巧みな点は、エンジン負荷が上がるほどキャブレター内部の空気の流 速は上がり、それに合わせてサクション・チャンバー内の負圧の強さも増し、サ クション・ピストンの高さが自動的に調節されてベンチュリー部の体積がエンジ ン負荷に適した状態に変化する事で平衡状態が維持されるという点にあります。

 みにダンパー・オイルは何をしているのかと言うと・・・
スロットル・ペダルを踏む→バタフライ・バルブが開く→フレッシュ・エアが キャブレター内部に吸い込まれる→ベンチュリー部での負圧が増す→ジェットか ら吸い出されるガソリンの量が増える→サクション・ピストンが上昇してエンジ ン負荷/ガソリン供給の新しい平衡状態に移行する
 という一連の動きの中でサクション・ピストンの動きを抑制して加速時に混 合気を濃い目にする働きと、同時に急激に高まる負圧によってピストンが適正位 置を越えて飛び上がって逆に混合気が薄くなることを防ぐ働きをしています

 てこうした可変ベンチュリー・キャブレターの作動原理の中で、サクション・ ピストンを本来とは逆の向きに装着(つまり底部の穴をエアクリーナー側に)し たらどうなるか?
 の場合穴は当然キャブレター本体のブリッジよりも前に位置することにな ります。で、そこはベンチュリー部で狭められる直前の空気が集中する正圧部で す(高速道路などで車線が減少する部分で渋滞するようなもんですな)と言うこ とはピストン底部に開いた穴から空気がサクション・チャンバー内に押し出され てくる、つまりサクション・チャンバー自身が正圧となってピストンを押し下げ る力が発生します。おまけにブリッジの後ろ側では負圧がピストンを下げようと しています。
 つまりピストンは一番下の位置から動けなくなる訳です。

 て、このトラブルは根本的に「ピストンを逆に装着したりできるのか?」とい う所に起因しています。
 SUだとキャブレター本体のピストンが入り込む部分に設けられた凸状の溝 をピストンの凹に合わせる仕掛けになっているために起こりえない話なんです
が、ゼニスの場合ピストンの位置決めはラバー・スカートに付けられたわずか な凸をキャブレター本体の凹に合わせる事で行います。
 ころが材質がラバーだけに、これを合わせなくてもサクション・チャンバ ー頂部はセットできてしまうんですな。まあ運が良ければ良し、悪ければ最良か ら最悪までの間のどの状態にでもセットされえます(^_^;)。
 れはラバー・スカートがサクション・ピストンの上下動に合わせるために かなり柔らかい材質である事が災いしています。

 言う訳で現在ゼニスをお使いの方で「どうもキャブの調子が今一つ」と言う方 や、これからキャブを開けてみようかと計画中の方々、くれぐれもこの点にご注 意ください。
 僕はBee−1の時に実際に逆装着ってのをやっちまったですよ(^_^;)。
 この時はたまたま「最悪」に近い状態だったもので、すぐにトラブルに気が 付きましたが

PS:「トラブル発生時は原理に戻って」とどなたかがおっしゃってましたが 同感です。原理的に追いかけていけば、だいたい原因にはたどり着くもの で、特に構造が簡単な我等MGなどでは当てはまる話ですね。

by MG PATIO <えむじい亭>マスター Corkey.O
(MGB V8conv. called "Bee-3",Yotsukaido-CHIBA)

この記事は、MG亭に投稿された物を転載した物です。
著作権は、文章については「Corkey.O」氏に、HTMLに関しては私にあります。