MGBメンテナンス
その2

 通常のメンテナンスについては、前述してありますが、
通常のメンテナンスを行っていても、ここは改善した方がいいよなぁ、という点、新規購入時にチェックした方がいいよなぁ、という点を。

■はじめに

 MGBは最終モデルが1980年10月に生産が打ち切られてから、20年以上になります。1962年のMK-1からは40年、オリジナルコンディションでも十分、現代の交通事情に通用するという意見もありますが、最終モデルでも少々つらい局面に出会うことがあります。
 力性能的には、気ガス規制を受けて居ない前期モデルの方が現代の交通事情に適合しているといえるでしょう。前期型は、カタログスペックで90馬力以上あり。車重もおよそ1t以下ですので、そこそこの加速性能があり、高速道路の合流や、追い越し加速にも不自由しません。
 0年ごろの リセスド・グリルあたりから、北米仕様は排気ガス規制対策が始まり、エンジンの圧縮比が落とされ、パワーダウンしています。

 悪なのが、74年以降のRB(5マイルバンパー)モデル北米・日本仕様です。ゼニスストロンバーグ製のシングルキャブレーターと、触媒類により当時の規制をクリアしたのでした。1tオーバーの車体を62馬力,12Kg程度のトルクで引っ張るのは、もはや動力性能的には、スポーツカーとは言えない物でした。

 ストロンバーグ自体は、決して「悪い」キャブでは無いのですが...

さて、チェックすべき項目を見ていきましょう。

1. 電気系


注意:
電気系の改善作業は、十分に回路図(ヘインズやワークショップマニュアル掲載)を確認し、知識工具の無い場合は、専門の工場などで作業して貰ってください。間違った結線は機器の故障を招き、端子のずさんな処理はショートすれば最悪炎上して廃車です。


 交換したばかりのバッテリー上がり、上がり気味の場合、オルタネーター(ダイナモ)を交換又はオーバーホールして下さい。以外と寿命は短いです。10万キロまでは持たないでしょう。それでも改善されない場合、どこかでショートや漏電の可能性も。ダイナモ装備の場合は若しくは、レギュレーターを交換(専門店なだ修理調整でも可能)でしょう。

 現在日本で走っている車は、ある程度は部品を交換したり、配線を改善など、手を入れられている個体が多いとは思いますが、もし、以下の点がオリジナルのままで手つかずでしたら、改善された方がいいかと思います。

a.リレー:
 後期型では、2つのルーカス製リレーが、MGBの主要機能のほとんどを司っています。計器も作動せず、灯火も点灯せず、電動ファン(RB後期)も回らない、といった事態に陥りますので、同等の機能を持つ日本製か、ボッシュ製に交換しましょう。出来れば、電動ファン装着車は、電動ファンの主電源は別の配線として、ヒューズとリレーを噛ませた方が安心でしょう。その他、あまり細分化するとメンテナンスに支障が出る可能性もありますが、ある程度電流の分散を計った方が安全かも知れません。

b.ヒューズ:
 ューズ切れが多発する場合、配線のショートが考えられます。電気火災は本当に恐いので、緊急に整備を必要とします。
 ガラス製の管ヒューズが標準ですが、30A(17A定格)の物は、なかなか売っていません。さらに、ルーカスのこれ、5本パックのうち、最初から切れてる物も(笑)系統も整理して、最近の板ヒューズに付け替えるのも後々楽かと思います。また、配線図を参考に経路を判別できるなら、ヒューズの系統を増やすと有事の際に役立つことでしょう。(新設ヒューズ回路に解説を忘れずに)ヒューズボックスも見た目を気にしないなら、汎用品ですっきりさせるのもいいでしょう。

c.ブレーキランプ系統:
これも、上記のリレーを通していますので、単独経路で引き直しをお勧めします。牽引時にブレーキランプが点いた方が安心・・

e.ヘッドライト:
 暗いと不満の人も多いかとは思いますが、市販のリレーキットを入れて配線を組み替えれば、若干は改善されます。シールドビームの場合、H4ユニットにするキットも英モス等から出ていますので、この際変更するのも一興かと。(キットを使わずとも配線知識があれば汎用品で対応可能です) Mk.1以外は、もうH4化されている車も多いとは思いますが。

f.オルタネーター化:
 Mk.1の場合、ダイナモ搭載ですが、オルタネーター化した方が、バッテリーの充電状態を考えると心理的に良いかも知れません。しかし、ルーカスのオルタネーターは、アイドリング状態では全然充電できず、最低でも1500回転は回っていないといけないようです。

e.で、オルタネーター国産化:
 程度のいい中古品でかまいません。回転方向とプーリーの形状が合いそうな物で、ブラケットの位置もオリジナルに近い物が数々ありますので、ブラケットの加工/新設は必要になりますが、検討する価値はあるかと思います。
2. 点火系


 ポイント式の方が、メンテナンスをきちんとしていれば、信頼性が高いです。むしろ後期型に純正採用のフルトラの方が問題が多い用です。
 最終型のRBには、45DM4(C.E.I)と呼ばれる、トランジスターユニット別置きのフルトラが使われており、信頼性は結構あるようですが、それ以前のデスビにアンプユニットがくっついている、45DE4(O.P.U.S)と呼ばれるフルトラは、信頼性が低く、もう実用している車は少ないかも知れません。45D4というポイント式デスビに戻されている車も多いようです。
 25D4(mk.1など)や45D4(RB以前、英国モデルはRBもあり)のデスビの場合、ルーミネーション社などのキットでフルトラ化することも出来ますし(45DE/DM4用もあり)永井電子から出ている同時点火ユニットや、汎用品を改造してフルトラ化するのも可能です。

 イグニッション・コイルは10年位の耐久寿命と言われています。段々発熱が多くなって行きますので、交換しましょう。フルトラの場合は、抵抗入りのバラストタイプを選びましょう。ルーカスのいわゆるゴールドコイルはポイント式デスビのみの対応です。ちょっと古い国産キャブ車にフルトラ装備の車種があって、そのコイルならおそらく使用可能です。(うちのにはトヨタ印のコイルが・・)

3. 冷却系


 メカニカルファンの76年式以前の車では、オリジナルの機械ファンで十分に冷却できるなら、それが一番ベストです。
 エンジンを完調にし、ラジエーターをオーバーホールすれば、通常の条件下では大丈夫でしょう。
 それでも不足の場合、サーモスタットを低温の物へ交換又はスリーブのみとする(サーモをとっぱらう)、そして電動ファンの追加です。但し、サーモスタットを抜いた場合、冬場戻さないとヒーターが効きません(笑)また、暖気運転の時間が長くなる、はたまたオーバークールとなります。

 76年型以降の電動ファン純正装備車は、まず電動ファンが確実に動くようにすること。必ず容量に見合ったリレーを組んで、手動に切り替えるのが確実です。また、ファンモーターの整備も忘れずに。

電動ファン国産化:
 電動ファン装着車(RB後期)は、現在では、オリジナルの押し込み型ファン装着の車は減っていることとは思いますが、効率的には押し込み型より、引き込み型の方が良いようです。
 ケンロー製でもいいですが、国産小型車用の電動ファンの装着をお勧めします。大抵吸い込み型でラジエーターの内側に装着します。
 新品ケンロー製より程度のいい中古国産ファンの方が効率が良いように思われます。(耐久性的には、ケンローでも10年は持ちましたが)

コアの張替:
 脱着費別、数万円のコストで、オリジナルのラジエーターを改造して、日本製のコアに張替出来ます。全然効率が違うと、経験者の声が。張替すれば、前期型(RB以前)のファンの車でも機械ファンで大丈夫、、

4. 足廻り


 フロントサスペンションブッシュ:ロアとアッパーとも、オリジナルの前後2分割型のブッシュよりも、V8用のスリーブ入りに交換した方が安心です。(交換時面倒だけど)若しくは、オレンジや赤のウレタン製ブッシュに交換するのも手かと。堅すぎる材質の物は、普段使いには不向きなようです。

 RB「以前」の車は、オリジナルでもバランスの良い車高と思いますが、RBになると車高が上がっているため、見方によっては、少々バランスが悪いです。ハンドリングにも影響していると思われるので、1インチダウンは、機会があればした方がいいと思いますし、クロームバンパーへコンバートした時は、なにもしないとさらに車高が上がります。その際、フロントのコイルスプリングはショートサイズを入れ、リア・リーフは、ローダウン・ブロックで下げていることが多いようですが、このブロック、車検時に問題になるとの情報もありますので、リアのリーフも1インチは車高の下がる物に交換した方が良いようです。
 1インチダウンならば、機械式立体駐車場のパレットでも大丈夫でしょうが、あまり下げると実用上支障が出るのは、皆さんご存じの通りです・・

 スプリングと合わせて、ダンパーもきちんとメンテナンスしたい所です。近年は、テレスコピック型への変更がキットも安価になり主流のようですが、リビルトになりますが、純正型のレバー式ダンパーも安定供給のようですし、これの強化型もある(純正品も内部のオリフィス廻りを交換すれば対応可能)ので、乗り心地を重視される方はこちらを選んでも宜しいかと。

なお、現状のFサス性能に満足できん、という向きには、アームも交換してしまう、コイルオーバーサスキットや、お手軽なネガキャンバー付きロアアームなども。

5.ブレーキ

 前述の通り、現代欧州車と比べ、ストッピングパワーに少々不足が見られます。また、耐フェード性でも、少々不安があります。
 しかし、なによりも、持てる性能をフルに発揮すること。金額的には、少々張りますが、ブレーキ系統のオーバーホールをまず考えて下さい。

 特に、後期型のサーボ付きでは、サーボ機構が作動不良の車が多々あるようです。信頼のおけるショップならオーバーホール キットでのオーバーホール、そうでなければアッセンブリー交換です。
 それに加え、フロントはキャリパーのOHを、出来ればマスターシリンダーとリアのスレーブシリンダー両方をセット行って下さい。最低でもスレーブシリンダーの交換を、

 パッド、シューも、純正品でも十分ですが、フェロードあたりのストリート用も値段はたいして変わらず、タッチは優れていると思います。 (同じフェロードでもDS11などのレーシングパッドは、低温時の効きは良くないようですよ(笑))
 その他、MINTEXやEBCも興味深いです。特に最新のEBCはダストが少なく、清掃が楽です。

 TAROXの溝付きローターや、ノーマルのローターにドリル加工した、ドリルドローターが安価で出回っているようです。ローターを交換するなら、一考の余地があるでしょう。
(パッドの減りが早いなど、ローターが割れる可能性がある、などの
マイナス効果もありますから、十分な検討を)

7.吸気・排気系

 のキャブレーターでもそうですが、きちんと清掃、調整し、それでも調子が悪いようなら、オーバーホールを考えましょう。ゼニスストロンバーグに関しては、部品の供給が難しく、場合によっては他のキャブへの切り替えも考えて下さい。動力性能的に、ストロンバーグを維持するよりも、SU等に切り替えをお薦めします。  

 キャブだけでは、十分ではありません。マフラーや、中間パイプ、マニフォールドや、それぞれの接合部から漏れがあるようですと、パワーロスとなります。はたまたエンジン不調の原因となります。専用テープ等の応急処置だけでも行いましょう。

8.エンジン・補機廻り

 ラグ及びハイテンションケーブルは交換したほうがいいでしょう。デスビ廻りも整備をお薦めします。
 タペット調整は必ず行って下さい。
 ベアリング系がガラガラ言うようだと、大きなトラブルにつながります。オルタネーターや、ウォーターポンプをチェックして下さい。特にウォーターポンプは消耗品と考えた方が良いようです。

9.燃料系

 ソリン漏れは、火災発生につながる危険な問題です。漏れが疑われる時は至急修理交換して下さい。ガソリン臭が特別臭い時は、点検して下さい。路面にガソリンが漏れていれば運転しない方がいいでしょう。煙草は遠慮下さい(笑)
 燃料フィルターは定期的にチェック、交換しましょう・・

 リジナルは、ルーカス製のポイント式電磁ポンプですが、生産当時から現役という選手は見たことがありません。同じ部品に交換している方や、ルーカス製でもトランジスタ式にしていたり、また三菱などの社外製品だったり。
 最もポピュラーなのは「ミツバ」のポイント式電磁ポンプでしょうか。作動の確実性や吐出量も申し分ないようです。価格は \13,000前後。その他、日産のディラーから日立製ポンプがNISOMOブランドで買えます。\12,000前後。
 まあ、各種製品が出ており、日本製の物は、小型で安価です。あ。インジェクション用は、そのままでは使用出来ませんので。「キャブレーター用」を購入して下さいね。燃圧調整装置が必要になりますので。

以上、ポイントとしては結構ありますが、最低限この点をチェックしておけば、かなり安心して乗れます。

クレジット

MGB社会的適合改造計画 改題 加筆です。

執筆は、MG亭メンバー協同です。金馬さん、岩ぞうさんのご協力に感謝いたします。


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